初級では「一方向の指紋」と捉えました。上級では、求められる性質・構成・正しい使い方へ。
概要 — まず全体をつかむ
詳細 — 1段階ずつ追う
求められる3つの困難性
安全なハッシュは、次が「現実的に不可能」であることを求められます。
- 原像困難 — 指紋から元データを求められない
- 第2原像困難 — 同じ指紋になる別データを作れない
- 衝突困難 — 同じ指紋になる2つのデータの組を見つけられない
構成には、Merkle-Damgård(SHA-2)やスポンジ(SHA-3)があります。
やさしく言うと(中級)
安全なハッシュは、次を満たします。
- 一方向 — データ → 指紋は作れるが、指紋 → データには戻せない
- 衝突困難 — 同じ指紋になる別のデータを、現実的に作れない
- 固定長 — どんな長さの入力も、決まった長さの指紋に
代表は SHA-2(SHA-256)。MD5・SHA-1 は衝突が見つかっており非推奨です。
正しい使い方
- HMAC — 秘密鍵付きハッシュ。メッセージ認証(真正性)。長さ拡張攻撃も回避
- パスワード保管 — 高速ハッシュはNG。bcrypt(適応的CPUコスト)や scrypt/argon2(メモリハード)+ソルト+ペッパー
- Merkleツリー — 大きなデータを部分的に検証(分散ストレージ・ブロックチェーン)
- 整合性・重複排除 — ファイルの同一性判定、コンテンツアドレス
やさしく言うと(中級)
「同じか・変わっていないか」を確かめる道具として、用途が分かれます。
- 改ざん検知・整合性 — 受け取ったデータの指紋を照合。重複排除にも
- パスワード保管 — 高速ハッシュ(SHA-256単体)はNG。bcrypt/scrypt/argon2のような専用関数+ソルトを使う
- HMAC — 秘密鍵を組み合わせた鍵付きハッシュ。「本人が作った・改ざんなし」を確かめる(真正性)
アニメーション『雪崩効果とソルト(レインボーテーブル無効化)』を開く
⚠️ 落とし穴と攻撃
- MD5/SHA-1の衝突 — 実際に偽造が可能に。使用しない
- 誕生日攻撃 — 出力長の半分のビットで衝突が現実的に(256ビットなら128ビット相当)
- 長さ拡張攻撃 — 単純な
hash(secret‖message)は危険。HMACを使う - 単純ハッシュでのパスワード — ソルト無し・高速はレインボーテーブル/GPUに弱い
- 切り詰め — 指紋を短く切ると衝突が起きやすくなる
やさしく言うと(中級)
- 暗号化ではない — 秘密にするためではない(戻せない)
- パスワードに高速ハッシュ+ソルト無し — 総当たり・レインボーテーブルに弱い
- 古い方式 — MD5・SHA-1は使わない(衝突が現実的)
- 切り詰め — 指紋を短く切ると衝突しやすくなる
関連する知識
理解度チェック
そのまま解けます(成績は保存されません)。無料アカウントを作ると、学習の記録と進捗の山登りが始まります。
問1. パスワードの保管に、SHA-256のような高速ハッシュをそのまま使うのが不適切な理由は?
問2. 鍵付きハッシュで「本人が作った・改ざんされていない」を確かめる仕組みは?
問3. 「指紋から元のデータを求められない」性質の呼び名はどれ?
問4. 出力256ビットのハッシュで、誕生日攻撃により衝突がおよそ何ビット相当の労力で見つかりうるか?
問5. SHA-3が採用しているハッシュの内部構成はどれ?
問6. 単純な hash(secret‖message)(秘密と本文の連結)が危険なのはなぜで、代わりに何を使うべき?
問7. scryptやargon2が、GPUによる大量総当たりを難しくするために計算に多くの記憶容量を要求する性質を何と呼ぶ?
問8. 大きなデータを部分ごとにハッシュで検証でき、分散ストレージやブロックチェーンで使われる木構造を何と呼ぶ?