ファイアウォール — 出入口で危険な通信だけ遮断する門番

概要 — まず全体をつかむ

中級ではパケットフィルタリングとデフォルト拒否、ステートフルの考え方を見ました。上級では、状態をどう表で持つか・アプリまで見る次世代FW・守る層の分担・外向きの制御とマイクロセグメンテーションへ進みます。

詳細 — 1段階ずつ追う

状態表でコネクションを追う

ステートフルインスペクションの正体は、コネクション追跡の状態表です。1つ1つのパケットを孤立して見るのではなく、通信の一連の流れを1エントリとして覚えます。

  • 表に載るのは「送信元・宛先のIP/ポート・プロトコル・状態(確立中・確立済みなど)」の組
  • 内側発の通信が始まると新しいエントリを作り、その戻りだけを一致させて通す。NATとポート の変換表と同じ「内側発は戻せる・外からは入れない」構造
  • 使い終わった接続はタイムアウトで表から消す。表が溢れないようにする運用も要点
アニメーション『パケットフィルタリング(許可・拒否)』を開く
外部ネットインターネット(危険も届く)内部ネット社内サーバ・PCファイアウォールルール表で門番をする宛先443 / HTTPS許可宛先80 / HTTP許可宛先22 / SSH拒否宛先3389 / RDP拒否その他すべて拒否守りたい中身サーバ・PC・データベース宛先 443HTTPS宛先 80HTTP宛先 22SSH宛先 3389RDPデフォルト拒否 = ルールに書いていない通信は、通さないステートフル(状態を覚える)内側から始めた通信の「戻り」は、覚えているので自動で通す(外からの突然の通信は通さない)

パケットフィルタ型 vs プロキシ型 — フィルタ型は宛名(IP・ポート)を見て素通しに近い形で中継します。プロキシ型(※1)は接続をいったん受け止め、代理で相手へつなぎ直す。中身まで検査でき制御は強いが、間に立つぶん遅く重くなる。速さのフィルタ型、深さのプロキシ型という分担です。

登場人物メモ:

  • ※1 プロキシ — 通信を代理で受けて相手へつなぎ直す仲介役。中身を見て仕分けできる
  • ※2 シグネチャ — 既知の攻撃の「特徴パターン」。これと照合して不正を見つける
やさしく言うと(中級

ステートフルインスペクション※2 — 単に1つ1つのパケットを見るだけでなく、通信の状態を覚えておく方式です。内側から始めた通信を記録しておき、その戻りの通信だけを通します。外から突然来た通信は「始めた覚えがない」ので通しません。これは NATとポート の「内側発は戻せるが外からは入れない」という性質とちょうど重なります。

allow/deny リストとデフォルト拒否 — ルールには「許可(allow)」と「拒否(deny)」を並べます。安全側の原則はデフォルト拒否——まず全部拒否し、業務に必要な穴だけを許可で開けます。こうすれば「書き忘れ=遮断」に倒れ、想定外の通り道が生まれにくくなります。逆にデフォルト許可だと、書き忘れがそのまま穴になり危険です。

WAFとの違い(守る層の分担) — 基本のファイアウォールが見るのは主にネットワーク層(IP・ポート)です。一方 WAF(Web Application Firewall)は、Webアプリの層まで踏み込み、リクエストの中身を見て攻撃(不正な入力など)を弾きます。守る層が違うので、両者は役割分担で併用します。

境界を越えて拠点間を安全につなぐ通信そのものは、暗号化トンネルの VPN が担い、ファイアウォールはその出入口で通す・通さないを見張ります。

アニメーション『ステートフルインスペクション』を開く
ステートフルインスペクション — 状態を覚えて戻りだけ通す内部ネット社内PC・サーバ外部ネットインターネットファイアウォール① 内部から開始状態表に記録② 戻り:表にあるので通す状態表(覚えている通信)内部PC → 外部:443確立済内部PC → 外部:53確立済③ 外から勝手に表に無い → 遮断パケットフィルタ(状態を覚えない)1件ずつルール表に照らすだけ。「戻りかどうか」は分からないステートフル(状態を覚える)内側発を記録し、その戻りだけ自動で通す。外からの新規は表に無く遮断

次世代FWとWAFの守る層

基本のFWが見るのは主にL3/L4(IP・ポート)です。しかし「ポート443で通ってくるもの」の中身は、正規のWebもマルウェアもTLSに隠れて区別できません。ここを埋めるのが上位の仕組みです。

  • NGFW(次世代ファイアウォール)— ポートではなくアプリを識別し(同じ443でも業務アプリか動画かを見分ける)、IPS(侵入防止)を統合してシグネチャ(※2)で攻撃を弾き、TLSを一度解いて中身を可視化する
  • WAF(Web Application Firewall)— さらに上のL7・Webアプリ層に踏み込み、リクエスト本文を見て不正入力(SQLインジェクション等)を弾く
  • 守る層が違うので置き換えではなく重ねて使う。L3/L4のFW、アプリ識別のNGFW、Web特化のWAF——という層の役割分担です

拠点間を安全につなぐ暗号トンネルは VPN が担い、FWはその出入口で通す・通さないを見張る、という関係も同じ「層で分ける」発想です。

外向きの制御とマイクロセグメンテーション

門番はつい入ってくる通信ばかり見張りがちです。しかし本当に効くのは、出ていく通信の管理でもあります。

  • egress(外向き)制御 — 入口を突破されても、外向きを絞れば、乗っ取られた端末が外部の指令サーバへ連絡(C2通信)したり、データを持ち出したりするのを断てる。「入れない」だけでなく「勝手に出さない」
  • ゼロトラストとマイクロセグメンテーション — 「社内は全部信頼」をやめ、社内を細かい区画に割って区画間にも門番を置く。ある区画が破られても、隣へ横移動できない。ステートフルFWの状態表を、社内の内側にも張り巡らせる発想
  • 層の取り違えに注意 — L3/L4のFWだけでアプリ層の攻撃は防げない。ネットワークの層 を押さえ、どの層を誰が守るかを設計することが、過不足のない守りにつながる
やさしく言うと(中級
  • ルールの順序ミス — 上から順に一致するため、広い許可を上に置くと後の拒否が効かない
  • 穴の開けすぎ — 「とりあえず許可」を重ね、実質デフォルト許可になってしまう
  • 戻り通信の考慮漏れ — ステートフルでないと、正当な戻りまで塞いでしまう
  • 層の取り違え — ネットワーク層のFWだけでアプリ層の攻撃(不正入力など)は防げない。WAFなど別の層の守りが要る

理解度チェック

そのまま解けます(成績は保存されません)。無料アカウントを作ると、学習の記録と進捗の山登りが始まります。

1. ステートフルインスペクションが、外から突然来た通信を通さないのはなぜ?

2. 外向き(egress)の通信制御が重視されるのはなぜ?

3. NGFW(次世代ファイアウォール)が、基本のパケットフィルタ型FWと違ってできることはどれ?

4. WAF(Web Application Firewall)が主に守る層と役割はどれ?

5. プロキシ型ファイアウォールがパケットフィルタ型と本質的に違う点はどれ?

6. マイクロセグメンテーション(ゼロトラスト)の狙いとして最も適切なのはどれ?

7. 乗っ取られた端末が外部の指令サーバへ連絡を取る通信を、一般に何と呼ぶ?(英字と数字の略称)

8. IPSやNGFWが照合に使う、既知の攻撃の「特徴パターン」を何と呼ぶ?